家庭菜園の農薬散布液|間違いのない作り方|希釈倍率・正しい計量・散布液量

家庭菜園の農薬散布液、どのように作っていますか ?

  • 粉剤・粒剤の計量スプーン、薬剤が違っても同じスプーンで量っている。
  • 希釈する時、薬液のボトルキャップ(ふた)で目分量に近い方法で量っている。
  • 散布液量、葉先からボタボタと流れ落ちるまで散布している。
 
これらのやり方、必ずしもベストな方法とはいえません。

農薬散布液を正しく作るために最も大切なのは、農薬ラベルを確認し、その内容を守ること。その上で、希釈倍率を守り、正しく計量し、必要な散布液量を調製することが、安全で効果的な病害虫防除につながります。

この記事を読んでいただくことで、

  • 希釈倍率の本質、農薬ラベルどおりの濃度に調製すること。
  • 同じ計量スプーンで違う種類の薬剤を量ると誤差が大きくなりやすい。
  • 目分量では、毎回同じ量を量ることは難しくミスにつながりやすい。
  • 適切な散布液量とは、葉全体が軽くしっとりと濡れる程度を目安とする。
農薬散布液を間違いなく作るための大事なポイントが分かります。

積雪の多い東北南部で、100坪ほどの家庭菜園を20年以上続けてきたおじさんの経験をもとに、家庭菜園だからこそ役に立つ希釈倍率の考え方、正しい計量の方法、散布液量の目安を具体例を交えながら分かりやすく解説します。

この記事を読めば、同じ計量スプーンで異なる農薬を量る危険性や、目分量による計量ミスを防ぐ方法が分かります。また、葉の表裏へ適切に薬液を付着させる散布の目安も理解でき、自信を持って農薬散布液を作れるようになります。

1.間違えないための3つのポイント

家庭菜園で農薬を安全かつ効果的に使うためには、「希釈倍率」「正しい計量」「散布液量」の3つを間違えないことが重要です。どれか一つでも間違えると、十分な効果が得られなかったり、薬害や農薬の無駄につながったりすることがあります。

➀ 稀釈倍率 (散布液の濃度)

  • 希釈倍率とは、農薬をどれだけ水で薄めるかを示したものです。薬剤を使用する前に、必ず農薬ラベルで希釈倍率(=希釈倍数)を確認すること。
  • 希釈倍率に対する水の量と薬剤の量について、暗算はやらないことミスの元。早見表や換算表などのメモを自分用として準備し、必ずその都度、メモを確認しながら作業をする。

➁ 正しい計量

  • 農薬は、ラベルに記載された量を正確に量ることが基本。
  • 同じ計量スプーンで異なる薬剤を量らないこと。粉剤、粒剤などは、薬剤ごとに比重が異なるため重さ(g)が違う。
  • 事前に、使用するスプーンで実際に何g量れるかを、薬剤ごとに確認をしておいたほうが良い。
  • 液体をボトルキャップで量る際は、注ぎ方で量が変わる場合がある。専用の計量カップなどを使用したほうが正確。(キャップと計量カップの差を事前に確認しておくことをおすすめします)
  • より正確に計量するには、電子はかりやデジタルスプーンスケールを使用したほうが良い。(とりわけ、一般的なスプーンとのg数差異は大きいのが実状)

➂ 散布液量

  • 散布液は、必要な量だけを作ることが基本。経験を要しますが、毎回一定量を作って、必要量を把握していくことがポイント。(基準散布液量の計算はできますが、家庭菜園では実際の散布作業に合わない場合があるため)
  • 必要量は、作物の種類や大きさ、葉の量によって変わる。大事なことは、葉の表や裏に薬液をムラなく均一に付着させること。丁寧な散布を心がける。
  • 目安は、葉全体が軽くしっとりと濡れる程度。葉先からポタポタ、ボタボタと流れ落ちると「これで十分」という、なぜか安心感は有りますが、そこまで必要ない。
  • 流れ落ちるほど散布しても、防除効果が高くなるわけではなく、農薬が無駄になるだけ。「葉がしっとりと濡れたら十分」と勇気をもって割り切ること

2. 農薬散布液を作る前に必ず農薬ラベルを確認する

家庭菜園で農薬を安全かつ効果的に使用するために最も大切なのは、農薬ラベルを確認し、その内容を守ることです。

農薬散布液を正しく作るために、最初に行うべきことは農薬ラベルを確認。農薬ラベルは単なる説明書ではありません。農薬取締法に基づき定められた使用基準そのものであり、使用者はラベルに記載された内容を守って使用しなければなりません。

ラベルを確認せずに散布液を作ると、希釈倍率や使用時期、使用回数を間違え、薬害や十分な防除効果が得られない原因になることがあります。

農薬ラベルで確認する主な項目

農薬散布液を作る前に、次の項目を必ず確認してください。

① 希釈倍率 (=希釈倍数)

希釈倍率は、農薬をどれだけ水で薄めるかを示しています。

例えば、「1000倍」と表示されている場合は、ラベルどおりの濃度になるように、農薬と水を正確に計量して散布液を作ります。「500~1000倍」のように幅がある場合は、ラベルの使用方法や病害虫の発生状況に応じて適切な濃度を選びます。

使用時期

使用時期には、「収穫前日まで」「収穫7日前まで」などの制限があります。使用時期を過ぎて散布すると、農薬の適正使用基準から外れてしまうため、必ず散布前に確認して下さい。

使用回数

農薬には、作物ごとに使用できる回数が決められています。同じ有効成分を含む農薬を使用した回数も含めて制限される場合があるため、散布履歴を記録しておくと安心です。

◉農薬の使用回数について   「出典:クロップライフジャパンのリーフレットから」

使用できる作物

同じ野菜でも、登録されている作物以外には使用できません。

例えば、「トマト」に登録があっても、「ミニトマト」には登録がない場合は使用できません。必ずラベルに記載された適用作物を確認してください。

◉使用できる作物について   「出典:クロップライフジャパンのリーフレットから」

ラベルの確認が、安全で効果的な農薬散布の第一歩

希釈倍率、正しい計量、散布液量は、すべて農薬ラベルに記載された内容を基準に決まります。まずラベルを確認し、その内容を守って散布液を作ることが、安全で効果的な病害虫防除につながります。

3. 希釈倍率を正しく理解する

農薬を安全かつ効果的に使用するためには、希釈倍率を正しく理解することが重要です。希釈倍率を間違えると、病害虫への効果が十分に得られなかったり、薬害の原因になったりします。散布液を作る前に、必ず農薬ラベルで希釈倍率を確認し、そのとおりに調製してください。

➀希釈倍率とは何か

希釈倍率とは、農薬を水でどれだけ薄めるかを示す数値です。

例えば、使用できる濃度の範囲が「1000~2000倍」とラベルに表示されていれば、

・1000倍希釈:水1L(1000ml)に対し農薬(=原液)を1ml(1g)混ぜた状態。

・2000倍希釈:水1L(1000ml)に対し農薬(=原液)を0.5ml(0.5g)混ぜた状態。

・薄さの関係 :1000から2000倍(数字が2倍)になると、原液の量は1mlから0.5ml(数字が半分)になるため、出来上がりの液は薄くなります。
つまり、数字が大きいほど散布液の濃度は薄くなり、数字が小さいほど濃くなります。
表示されている1000~2000倍でしっかりと効果が出るように作られています

初めて使用する場合や病害虫の発生が少ない場合は、2000倍程度の薄い濃度から始めたほうが良いです。ただし、必ずラベルの指示に従い、病害虫の発生状況に応じて適切な濃度(たとえば1000倍)を選ぶようにしてください。

➁必要な農薬量の求め方

希釈倍率が分かったら、次は作る散布液量に合わせて必要な農薬量を計算します。

たとえば
・散布液量を 10L
・希釈倍率 2000倍 で作る場合
  10L ÷ 2000倍 = 農薬 5ml(または5g)となります。
   計算式、 農薬量 = 散布液量 ÷ 希釈倍率 (注意点、単位を合わせる)

散布液量 10Lとは10,000ml
(1Lは1,000ml、 10L × 1,000ml = 10,000ml)
農薬量  10,000ml ÷ 2000倍 = 5ml
農薬量  10,000ml ÷ 1000倍 = 10ml

※計算された数値は、粉状や粒状の農薬を水で溶かして使うものは、g(グラム)、液体の農薬は体積を量るため ml(ミリリットル)を意味します。

間違いを防ぐためには、早見表などのメモを準備し常に確認しながら作業をするようにしてください。暗算はミスの元になりやすいです。

ミスを防ぐためには、インターネットで各種の農薬希釈計算ツールが有ります。自分用のメモを作成してください。下記は私のメモをアレンジしたものです。

【希釈計算ツールを紹介します】

希釈倍率計算アプリ、希釈倍率早見表など、ネット上にはさまざまあります。大事なことは、調べた数値を自分用にメモして早見表など作成する、作業の都度に使用する、これにつきます。

➀出典:日本曹達株式会社

・作りたい散布液の量などから必要な農薬の量を計算する
・使いたい農薬の量から 出来上がる散布液の量を計算
・散布したい面積から必要な 農薬の量と散布液の量を計算

➁出典:株式会社 コメック (お薦めです)
・希釈倍率-農薬量

4. 農薬を正しく計量する

ラベルの希釈倍率から計算した数値に、完全に一致させることが望ましい。がその数値にできるだけ近づけることがより重要なこと。なぜならば、毎回ほぼ同じ量を安定して量ることは難しいからです。(電子はかりならばできなくもないが)

農薬は少量を扱うため、わずかな誤差をゼロにすることはきびしい。大事なことは、適切な計量器を使用して、毎回同じ方法で正しく計量すれば、誤差を小さく抑えることができます。

  • 農薬を目分量で量る。
  • スプーンを山盛りにしたり、すり切りにしたりが一定でない。
  • 粉剤を押し固めるときと、ふんわりすくうときがある。
  • 同じスプーンで比重の異なる農薬をそのまま量る。

これらに気を使わないと計量値は毎回バラツキが大きくなる。同じ量を量るつもりでも、その都度、量った量がバラツイテしまう。正しい計量とは、毎回ほぼ同じ量を安定して量れることが最も大切なことです。

➀計量器具の選び方

次のように計量器具を使い分けると便利です。
・液剤 : メスシリンダー、計量カップ、目盛付き容器、注射器タイプの計量器具
・粉剤・水和剤 : 計量スプーン、電子はかり(デジタルスプーンスケールなど)

特に少量を量る場合は、目分量ではなく、できるだけ正確に計量できる器具を使用したほうが楽に作業ができます。

デジタルスプーン
(ディジタルスプーン・メスシリンダー)
計量備品
(計量備品類)

➁計量スプーンの誤差に注意
粉剤や水和剤は、付属の計量スプーンや市販の計量スプーンを使用することが多いですが、同じ容量のスプーンでも薬剤によって重さ(g)が異なるため注意が必要。なぜならば、薬剤ごとに比重(かさ密度)が異なるためです。

下記は、3~18gの一般的な計量スプーンで4種類の農薬を量り、電子計量スプーンでg数を実測して再確認した結果です。同じ6gのスプーンでも実測値は1.9~3.1gと半分以下のg数です。

このように、計量スプーンの表示だけを信用せず、実際に使用する農薬で一度重量を確認しておくことをおすすめします。 

計量比較一覧表

下記写真はZボルドー水和剤。 左側は計量スプーン表示18gの実測値は 5.1g、 右側は電子計量スプーン 18g実際の量です。見た目で違いが分かります。粉剤・粒剤は、それぞれに「ふんわり感」、サラサラとした粉の質感、状態(かさ密度)が違うために、正しく量るには、それなりの準備が必要。

薬剤量の比較

➂電子はかりを活用する

私は、[電子計量スプーン ドリテック(dretec) PS-032RD 0.3~75g以下での精度 ±0.2g]を使用しています。 

粉剤や粒剤は1g単位で精密に計量できる小型の電子はかり(デジタルスケール)を活用したほうが楽に作業ができます。上記はgとmlの両方可能。 液剤は、農薬ボトルのキャップ一杯分はそれなりに量は合っています。ただし、1/4杯や1/2杯の量は実質目分量でしか量れません。注射器タイプの計量注入器も空気が入ると誤差の原因となりやすいです。メスシリンダーのようなメモリが見え、確認できる容器をおすすめします

5. 必要な散布液量を決める

散布液量とは、作物に散布する薬液の量のことです。
私が使用している動力噴霧器のタンク容量は10Lで、1回に作る散布液は最大10Lです。

散布するときの目安は、葉全体が軽くしっとりと濡れる程度。葉先から薬液がボタボタ、ポタポタと流れ落ちるまで散布しないように心掛けています。(ポタポタ感は安心感にはつながりません。でも、ポタポタ感が多いのが現実です)

ここからは基本的な考え方です。
散布液量は数字だけでは決められない
散布液は、必要な量だけ作ることが基本です。しかし、家庭菜園では、その必要量を数字だけで決めることは簡単ではありません。

なぜならば、必要な散布液量は、作物の種類だけでなく、生育状況や葉の茂り具合によって大きく変わるからです。たとえば、トマトでも生育初期と収穫最盛期では葉の量が大きく異なります。また、毎年栽培する株数も変わります。

つまり、必要な散布液量は固定した数字ではなく、その時々の作物の状態によって変わるということです。

家庭菜園で大切な考え方
家庭菜園では、希釈倍率は必ずラベルどおりに守ることが大前提です。一方で、散布液量は、作物の葉全体に薬液がムラなく付着する量を目安に調整することが現実的です。

例えば、農薬ラベルに

 • 希釈倍率:1000倍
• 10a当たり使用液量:100~300L と記載されているとします。
 私の畑では、幅1m、長さ10mの畝にトマトを3株栽培しています。面積は約10㎡です。

この条件を単純に換算すると、
• 使用液量 :約1L
• 必要な農薬:約1g(または1mL) となります。

しかし、家庭菜園では、1gを正確に計量することは簡単ではありません。また、生育が進んで葉が茂ったトマトでは、1Lでは葉全体に十分散布できないこともあります。

このように、ラベルの10a当たり使用液量を面積だけで単純に換算すると、実際の散布作業には合わない場合があります。

そのため家庭菜園では、希釈倍率を守ったうえで、葉の表裏に薬液がムラなく付着し、「葉全体が軽くしっとりと濡れる程度」を目安に散布することが現実的です。


薬液が葉から流れ落ちるほど散布しても、防除効果が高くなるわけではありません。かえって農薬の無駄になり、周囲への飛散も増えてしまいます。
一方、散布量が少な過ぎると、葉の裏側や株の内側まで薬液が届かず、十分な防除効果が得られないことがあります。

6. 農薬散布液の作り方(実践手順)

散布液づくりで最も大切なのは、次の4つを守ることです。

  • 農薬ラベルを確認する。
  • 農薬を正確に計量する。
  • 規定量の水で正しい濃度に調製する。
  • 十分に混合し、均一な散布液を作る。

この4つを守ることで、安全で効果的な農薬散布につながります。やり方は人それぞれですが、ポイントは早見表など用意し確認をしてから作業することです。

散布液調製準備品
水と薬液

下記は私のやり方の一例です

(1)農薬ラベルを確認する。適用害虫や病気、希釈倍率、早見表を確認して薬剤量のチェック。

(2)計量バケツに10Lの水をいれる。容量14Lのビニルバケツはかき混ぜても水はあふれない。1L単位で外側に目盛りが付いて便利。

(3)展着剤「ダイン」をいれ、泡がよく出るまでかき混ぜる。ダインは500円弱、農薬を葉にしっかり付着させるために使用する。(10Lで1~3mlの割合なので目分量で適当に)

(4)農薬をできるだけ正確に計量する  (早見表確認しながら) 液剤はメスシリンダーやメモリ付計量カップ、注射器タイプの計量器具を使用し、粉剤や水和剤は電子はかりやデジタルスプーンスケールを活用すると、より正確に計量できます。

(5)よくかき混ぜる、農薬が溶け切れていないこともあるのでしっかりと確認。

(6)動力噴霧器のタンクに入れる 1回で作る量は最大10L。余った場合はその他の作物もついでに散布する場合もある。

作業は難しくありませんが、手順を間違えると正しい濃度にならなかったり、薬剤が十分に混ざらなかったりすることがあります。

7. まとめ

家庭菜園で農薬を安全かつ効果的に使用するためには、農薬ラベルを守り、正しい方法で散布液を作ることが何より大切です。

散布液づくりで押さえておきたいポイントは、次の4つです。

① 農薬ラベルを守る

農薬ラベルは、使用方法を説明したパンフレットではなく、必ず守るべき使用基準です。散布前には、適用作物、希釈倍率、使用時期、使用回数などを必ず確認し、ラベルどおりに使用する。

希釈倍率を守る

希釈倍率は、農薬の効果と安全性を保つために定められています。「少し濃いほうが効くだろう」「少し薄くても大丈夫だろう」という自己判断は避け、ラベルどおりの希釈倍率で散布液を作ることが基本。

正確に計量する

農薬は、ラベルに記載された量を正確に計量することが重要。

計量スプーンは薬剤によって量れる重さが異なるため、事前に実際の重量を確認しておくと安心です。また、より正確に計量するためには、電子はかりやデジタルスプーンスケールの活用をおすすめします。

必要な散布液量だけを作る

必要な散布液量は固定した数字ではなく、作物の種類や生育状況に応じて必要な量を散布してください。葉の表裏に薬液がムラなく付着し、「葉全体が軽くしっとりと濡れる程度」を目安に散布することが現実的。

さらには、希釈倍率などの早見表を作成し、それを見ながら散布液を調製する習慣を身につければ、計量ミスや調製ミスを大幅に減らすことができます。

ご訪問いただきありがとうございました。

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