
- 散布で作物が枯れたり、病害虫に効いていないこともあるが、どうしてなのか
- 作物に、できるだけ多くの散布液をかけているが、適正量ってあるのかどうか
- 散布液の濃い薄い、何が問題でどうなってしまうのか、ぜんぜん分からない
- 畑の面積が狭くても広くても、希釈倍数を変えてはいけないものなのか
農薬散布の最重要ポイントは、「散布液を作物全体に、ムラなく均一に付着させること」です。「たくさんかける」ことではありません。
効果は、どれだけ薬が付いたか(付着量)、作物全体に均一に付いたか(付着ムラの少なさ)で大きく決まります。
この記事を読んでいただくことで、
- 散布ムラとは、薬液のかかり方のばらつき、効く効かないの差が大きくなる
- 散布液を、作物全体に、もれなく行きわたり、均一に付着させることが重要
- 希釈倍数、薬液が濃いと薬害へ、薄いと効果不足になる、その理由とは
- 適正な散布液量、そのための散布技術、注意すべきことがらなどについて
積雪の多い東北南部で20年以上、100坪程度の家庭菜園をやってきたおじさんの経験から、効果のある農薬散布方法を解説しています。農薬散布は簡単そうでそうでもない。知れば知るほど奥が深いです。
家庭菜園といえども基本的な事柄については知っておくべきです。私も農薬散布はしますが本質的なことは何も知っていませんでした。散布ムラ、付着ムラがあることによる問題点、ムラを減らすためにはどうすればよいのかについて丁寧に解説をしています。
読んでいただくことで、農薬散布の本質が分かり、散布の時の意識が変わり、効果のある散布ができるようになります。
― 目 次 ―
1.農薬散布ムラなく均一にかけることが最重要ポイント
散布液を「作物全体に、もれなく行きわたり、均一に付着させること」病害虫防除成功の最重要ポイントです。なぜならば、農薬散布の効果は作物に実際に残る薬の量(=付着量)と均一性、すなわち「薬液の有効成分」がどれだけムラなく均一に付着したかによるからです。
ムラとは薬液の散布状態にばらつきがあること。均一とは同じ量が散布されていること。ばらつきがあることで、薬液が薄かったり濃かったり、薄い部分は効果不足、濃い部分は薬害の原因になります。
よって、「ばらつきがあること、均一でない状態」にある農薬散布、この「ムラ」を減らすことが最重要課題となります。
2.ムラが大きいほど「効かない」と「薬害」が同じタイミングで発生する
農薬散布のムラが大きくなると、薬液の濃い部分では薬害、薄い部分では効果がでないという状態が、同じ畑の同じタイミングで同時に発生する原因になります。なぜならば、ムラが大きい(ばらつきが大きい)と作物への薬液の付着量に偏りが出てしまうからです。
その結果、害虫や病気が抑えきれず(効かない)枯れてしまう株と薬が濃すぎて葉が傷む、奇形になる(薬害)株が隣り合わせで同時に発生してしまいます。
(1)散布ムラとは、やり方が悪くへたなこと
散布ムラは、畑の場所や作物の部位(実、葉、根など)によって農薬が多くかかっている部分(箇所)とあまりかかっていない部分(箇所)ができてしまう状態です。
「ムラがでる、ムラがある」とは、全体に均一(同じ状態)ではなく、「濃い部分と薄い部分」「良い部分と悪い部分」などが混ざっている状態です。
・ムラがある状態 : 薬が濃い部分と薄い部分、あるいはまったくかかっていない部分がある
・ムラが無い状態 : 全体に均一(同じ量)にかかっている
結果として病害虫が残ったり、防除効果が不安定となり、再発しやすい原因になります。
(2)付着ムラとは、葉への薬液のつき方にムラがあること
葉へのつき方のムラは、薬液が葉に均一についていない状態。葉の表だけ、葉の裏に届いていない、葉先だけが濃い、中央部が乾いているなどです。
害虫や病原菌は、葉の裏や葉が重なった部分、株の内部に多いため付着ムラがあると効果がでません。噴霧器や散布ノズルを使って、作物のどこに、どうやって薬剤を当てるのかがポイントです。
3.ムラを減らす・希釈倍数・散布液量・丁寧な散布が重要
(1)希釈倍数を守ること
薬剤の瓶や袋に記載(ラベル)されている希釈倍数(例:1000~2000倍)を守ること。
- 濃すぎると、薬害、液だれ、ムラが多くなる要因
- 薄すぎると、効果不足になる
(2)適正な散布液量を確保すること
- 散布量が少なすぎると、葉裏まで届かない、株の内部にまで入らない、部分的にしか濡れないなど、付着ムラの部分が多くなる
- 逆に散布量が多すぎても、液だれ、流亡、一部だけの過剰付着になりやすい
(3)ムラを減らすには、いつやるか、どう当てるかを意識して丁寧な散布を心がけること
- 最も重要なのは「散布をいつやるか」風は飛散につながり、高温は薬液が蒸発して効かない、風や気温、朝露や雨を意識して、いつやるかで最適な方向が変わってくる。
- 作物に散布液をどう当てるか。薬液が葉裏まで、作物の奥まで液がかかるよう、下から上へ、上から下へ、全体に行きわたるように散布すること。ノズルの角度がポイント。
- 散布の効果を左右するのは、散布の方向と角度。作物の背丈、葉数の多さ、繁茂具合を見ながら、作物にあわせ調整しながら丁寧に散布する。
さらには、一定の速さで歩くなど、これらを意識することで薬剤の無駄を減らし高い防除効果が期待できます。
4.理想の散布状態は薬液がムラなく均一に付着すること
作物全体に、細かい薬液が均一に無駄なく付いている状態
- 必要な場所に、必要な量の薬液が、ムラなく均一に付着している状態
- 薬液が「葉全体に均一に広がり、滴り落ちる直前」これが理想です
適切な表現は難しいですが、葉の表裏に均一付着、株内部まで到達、大きな液だれなしの状態。特に大切なのは、「たくさんかけること」よりも、葉や茎に均一に付着していること。
ムラの少ない付着、そのためには早朝や夕方の気温が低く、風がほとんどない時間帯の散布。日中の高温や雨の前後は避けること。作物全体に行きわたるよう歩く速さを一定にして移動するなど、丁寧な散布が必要。
5.希釈倍数は守ること高いほうが均一に付着させやすい
希釈(きしゃく)とは、濃度の濃い薬剤の原液に水を加えて濃度を薄めること。
- 農薬散布における希釈倍数とは「原液を水で何倍に薄めるか」を示す。
(1)ラベルに記載の希釈倍数は必ず守ること
散布液の濃度は、倍数の数字が高いと薄く(例:2000倍)、数字が低いと濃い(例:500倍)散布液になる。農薬ラベルで定められた適正な希釈倍数を守ることが薬害防止のために重要です。
なぜならば、倍数は、散布効果、安全性、薬害、残留性(健康に影響が出ない)のバランス点であり、「最も安全に、安定して効く範囲」として決められています。
希釈倍数、使用回数、使用時期、散布量を守る前提で厳しく安全確認がなされ、その上で登録が許可されます。ラベル以外の使い方は、「安全確認がなされていない使い方」になります。
- 1000倍指定なのに500倍で散布すると、薬が濃くなりすぎ、葉が焼けるなどの薬害が出やすくなる
- 1000倍指定なのに3000倍のように薄くすると、必要な薬量が足りなくなり、病気が止まらない、害虫が生き残るなどにつながる


(2)1000倍と2000倍では、高いほうがムラが少なく均一に付着させやすい
農薬散布で重要なのは「1000倍か2000倍か」より、ムラなく作物全体に適正量を均一に付着させること。なぜならば、濃くてもムラだらけより、少し薄くても均一に付着したほうが防除効果の高いことがよくあるからです。
濃いものを少なくよりも、薄いものを広く均一にという違いは、多量散布のほうが防除効果が安定しやすい、すなわち散布ムラを液量で吸収しやすいから。
ただし重要なのは、希釈倍数だけ守っても、散布ムラ、葉裏に届かない、散布量不足があると効果は落ちます。農薬散布では、「ラベルの希釈倍数を守った上で、均一に付着させる」ことが最重要です。

(3)希釈倍数、濃い液、薄い液、押さえておきたい基本的なこと
- 高い希釈倍数は、薬剤の原液量に対して、多くの水で薄めること
原液が一定量(5mL)では、500倍で5L、2,000倍では20Lの水(総散布液量)で薄めること。
原液の割合は500倍では0.1%と高く濃い散布液。2,000倍では0.025%と低く、薄い散布液ができる。
- 低い希釈倍数は、薬剤の原液量に対して、少ない水で薄めること
総散布液量が一定量(10L)では、原液の量が500倍で20mLと多い、2,000倍では5mLで少ない量になる。原液の割合は、500倍では0.2%と高く濃い散布液。2000倍では0.05%と低く、薄い散布液ができる。

6.適正な散布液量は作物にムラなく均一に付着する量
適正な散布液量の目安は、作物全体に必要な量の薬液が、ムラなく均一に付着する量のこと。単純に「多いほど良い」「濃いほど効く」ではありません。
考え方としては、作物全体を十分濡らせるか、しかし無駄に流れ落ちないか、このバランスで決まります。理想は、「葉全体がしっかり濡れているが、ボタボタ垂れすぎない状態」です。
少なすぎは防除効果不足につながり、多すぎは薬害増加など「付けば付くほど良い」わけではありません。少なすぎは、付着していない部分が残る。多すぎは、垂れて無駄になる。適量とは全体に均一に広がる量です。
適正な散布液量は、作物の形で大きく変わります。葉面積 葉の重なり 草丈 茂り方が違うからです。「散布量」そのものではなく、「均一な付着状態を作れるか」にあります。
農薬散布で最も重要なのは、作物全体に、ムラなく均一に付着させること。そのためには、単に散布液をかけるのではなく、散布技術が非常に重要になります。
7.散布技術のポイント作物に散布液をどう当てるのかで決まる
農薬散布は、「どれだけかけたか」より、「どれだけ均一に付着できたか」で効果が決まる。散布量を多くしても、散布ムラなどで付着性にばらつきが発生すれば防除効果は半減します。
なぜならば、散布液の効果は作物に付着した部分(箇所)しか効かない、散布液が付着していない部分(箇所)は防除ゼロ、何ら効果は無いのと同じです。だからこそ、「散布技術」が防除効果そのもの、非常に重要な要素になります。
散布の効果を左右する要因はさまざまです。目視で確認をしながら作物に合わせ、散布液をどう当てるかを意識して「均一に付着させる」ための丁寧な散布をすることがたいせつです。
ムラなく均一に付着させる技術的ポイント
面倒ですが、できそうなことから少しずつやってみること、意識してやるだけで効果は変わってきます。
➀作物全体を見る葉の表裏、株の内部、下葉、茎周辺まで液を届かせること。病害虫は、見えにくい場所に多く発生する。
➁散布方向を変える一方向だけでは、影になる部分ができる。そのため、前から 横から 下から上へ、上から下へと角度を変えて散布すると付着ムラが減る。とりわけ葉裏は、下方向から当てる意識が重要。
➂適切な距離を保つ 噴霧器のノズルを散布する部分に近づけすぎない。近すぎると、一部分だけが液だれが増加、他はほとんどつかない。乾燥すると薬剤の跡が残り薬害リスクが大きくなる。
遠すぎると、液がふんわりと空気中に拡散しやすい。噴霧器にもよるが、葉からは30㎝程度離して、霧がふわっと広がるように当てること。
歩く速度が不安定だと、遅い場所は過剰付着、速い場所は不足になりやすい。そのため一定のリズムで移動すること。
➄ノズル選びが重要ノズルで付着性は大きく変わりますが、家庭菜園でノズルの選択までは難しいです。ただ、大粒よりも細かい霧状のほうが有利。なぜならば、広く均一に付きやすい、葉全体に広がりやすいのでムラが減少しやすい。ただし、細かすぎると風で流れ飛散しやすいので注意が必要。
➅圧力を適正にする手動噴霧器の蓄圧式などは圧力が落ちてくると液体のまま噴出したり、霧の量が極端に少なくなる。こまめに再加圧するしかないが、霧の細かさを意識して散布するように。エンジン式は安定した高圧力で散布できるが圧力が高すぎると、飛散増加、液だれ 葉傷みになりやすいので要注意。
⓻風を避ける風があると、作物の裏面不足が発生しやすい。一部に集中、一部にまったくつかないなどの偏りも多くなる。できれば、早朝か夕方の涼しい時間、無風から微風時が望ましい。
⓼作物の大きさに合わせる生育初期と後期では、必要散布量がかわる。初期は少量で届くが、成長し繁茂後は内部まで届かせる必要があるため多めに必要。初期段階でたっぷりとかけすぎると薬害リスクが高まるので要注意。
➈「濡れ方」を確認する重要なのは、実際にどう付着しているか。確認ポイントは、葉裏に付いているか、内部まで届くか、液だれ過多でないか、部分ムラがないか。

8.私の農薬散布、ゆっくりと丁寧にが基本です
液だれはしかたがない「かけないことよりも隅々までかけるようにする」という考え方。
あるべき姿はそれなりに分かりますが、現実の散布は理想通りにはいきません。なぜならば、「必要な部分に、必要な量の薬液が、ムラなく均一に付着している状態」をいちいち確認しながら作業をできないからです。
気を付けているのは、葉から散布液がポタポタトしたたり落ちる、できるだけこれを少なくしようとは気を付けていますが、どうしようもないのが現実です。この程度のやり方で薬害の発生はありません。
私の場合、主にエンジン式の噴霧器を利用しています。高圧なので楽に作業はできますが、生育初期の作物は手動の噴霧器のほうが使いやすいです。手動散布のほうが柔らかい霧の状態を作りやすいです。
私が農薬散布で意識していること
- できるだけローテーション散布になるように。殺菌剤は事前に計画的に、殺虫剤はできるだけ早めに。希釈倍数は高いほうが多い。
- 散布は、ゆっくりと丁寧にを意識してやる。
- 葉から散布液がポタポタトしたたり落ちる、できるだけこれが無いようには気を付けていますが、どうしようもないのが現実。
- どうしても量のかけすぎが多くなりがちです。2回、3回と同じ箇所の散布をしないようにはしている。
- 作業後、散布液は余る場合が多いです。余ったからといってかけ直しはしないこと。
- ポイントはいつやるかです、基本は朝の6時ころ、無風時に散布します。風があるときは止めたほうが良いです。散布液がねらったところへ行きません、無駄になる。
これらを意識しながら、希釈倍数を高くして、薄めの散布液で、多めの液量を散布しています。ただし、病気が発生した作物、害虫にガンガンやられている作物などは、希釈倍数の低い(濃度が濃い液)散布液を使用します。


9.まとめ
農薬散布の本質は、必要量を、全体へ均一に散布することです。
- 農薬散布の最重要ポイントは、散布液を作物全体にムラなく均一に付着させること
- 散布液量を多くかけることではなく、どれだけ薬が付いたか、全体に均一に付いたか、付着ムラの少なさで決まる
- なぜ均一が必要なのか、病害虫は葉の裏など散布しにくい箇所にいることが多い。一部だけ薬が濃い、一部はほとんど付いていないなどの散布ムラがあると効果は半減する
- 良い散布とは、葉の表裏に薄く均一、作物全体がしっとり濡れる、ポタポタ大量に垂れない、霧が細かく広がる。びしょ濡れよりも、均一に薄く広くつくほうが重要
- 農薬散布のポイントは、希釈倍数(散布液の濃度)、散布液量(どれだけかかるのか)、とりわけ散布技術(散布ムラを減らす)が大きい
家庭菜園では、風のない朝夕などに、作物の葉の表裏を意識して、ノズルをあまり近づけすぎず、角度を変えて、全体的にかけることを意識して散布すること、これだけで効果は変わってきます。
ご訪問いただきありがとうございました。









