
- 農薬が効かない、どうしてなのか理由が分からない
- いちばん効くと思う農薬を何回も散布しているのだが、効果はいまひとつ
我が家では白菜や大根などの芯くい虫被害が多くなりました。先般、世界気象機関(WMO)は2023~25年が観測史上「最も暑い3年間」になったとする報告書を発表しました。原因はここにもあるようです。
上手な農薬散布は被害を最小限にし収穫へも貢献します。でも上手で正しい散布方法とは何なのか、ここが重要なポイントです。
この記事を読んでいただくことで、- 農薬が効く、効かない、そのポイントはどこにあるのかが分かります
- 効かない最大の理由は、害虫が農薬に負けない抵抗力をつけてしまうから
- 対策は、同じ薬剤を連続して散布しない、異なる薬剤を計画的に散布する
- それには、IRACコードを活用したローテーション散布が最善の手法
実践は面倒なことも多いです。まずは害虫に対する戦い方の原理原則を知る。そこからです。
積雪の多い東北南部で20年以上、100坪程度の家庭菜園をやってきたおじさんの経験から、効果のある農薬散布方法を紹介します。農薬散布のポイントは、同じ薬剤を連続して使用しないこと。虫に抵抗力がついて農薬が効かなくなります。ならばどうするか。
IRACコードを活用したローテーション散布をすることで、被害を抑え、虫の抵抗力の発達を遅らせるがことができる。正しいやり方を知って、経験値をつむことがいちばん大事です。
始めに、一般的な農薬とは殺虫剤、殺菌剤、除草剤などです。この記事で表記される「薬」・「薬剤」・「農薬」はすべて殺虫剤を表し、表記を使い分けしています。
― 目 次 ―
1.農薬を効かせるためには、いつ、なにを、どのようにが、最大のポイント
農薬を効かせる最も効果的な方法は、「風のない晴れた朝に、有効成分の違う薬剤を、根元や葉の裏まで、しっかりと散布する」これにつきます。
そして、最大のポイントは同じ薬剤を連続して散布しないこと。
有効成分の違う薬剤をローテーション(交互に)して散布することです。
(1)いつ散布したほうが良いのか
- 風が弱く、薬が乾きすぎない曇天や朝夕がおすすめ。日中は暑く、薬が直ぐ乾燥して効き目が落ちやすい。早朝は葉が立ち上がっているが、暑いと葉がしおれて葉の裏などに薬がかからない。
- 強い風で薬が飛散したり、雨天時は薬が流れてしまう。薬が効かない。
- 害虫にもよるが、一般的に朝夕は活動的で薬の効果が高まる時間帯。日中は避ける。
- 害虫が小さいうちは薬が効きやすく、成虫になると皮膚が厚くなったり行動範囲が広くなったりして薬が効きにくい。
- 早期発見、見つけたらすぐに対処する。被害を最小限に。
(2)なにの薬剤を散布すべきか、効き目のある薬剤を調べて選ぶこと
- 登録番号が表示された薬剤を使用する (害虫に効き、問題がないと判断された薬剤)
- 害虫に、薬剤抵抗性が発達しないよう、有効成分が同じ種類の薬を使い続けないこと。同じ種類の薬剤を連用すると、害虫に抵抗力がつき、薬が効かなくなる。
- 展着剤を活用する。展着剤は薬を野菜にくっつきやすくする「のり」のようなもの。効果が長くなる。
(3)どのようにとは、丁寧に計画的に散布する
- 薬剤は、根元までしっかりと、上から下までたっぷりかける。ただし希釈倍率を守って。
- 害虫は葉の裏側に隠れていることが多いので、裏側もムラなく丁寧に十分かけること。
- 害虫が抵抗力をつけないよう、有効成分の違う薬剤をローテーション(交互に)して、計画的な散布に心がけること。
その他は、記録をつけることと安全がいちばんです。マスク、眼鏡、ゴム類の手袋(軍手は液体を吸収すると皮膚がかぶれるなど)、長袖シャツなど着用。薬剤は子供の手が届かない日光の当たらない涼しい場所で保管する。
2.農薬が効かない最大の原因は薬剤抵抗性の発達にある
(1)被害がおさまらない、害虫が駆除されない
- 薬剤散布効果があらわれていない最大の要因は、害虫の殺虫剤への耐性が原因です。
- 耐性とは薬剤抵抗性であり、害虫の薬剤に対する抵抗力が発達し、薬が効かなくなる。
- いちばん大事なことは、有効成分が同じ種類の殺虫剤を使い続けないこと。
- 同じ薬剤を使い続けると、少しずつ薬が効かなくなり、虫は死ななくなります。
虫の中には薬に強い遺伝子を持つ虫がほんのわずかに存在します。散布するとほとんどの虫は死んでしまいますが、強い虫だけが生き残る。生き残った虫は、強い子供を産み、畑は少しずつ薬が効かない虫だらけになる。この繰り返しです。
対策は、虫に薬剤抵抗性を持たせないため、効き方の違う薬剤でローテーション(交互)散布することが適切な防除方法といわれています。
(2)散布のタイミングや方法の不備について
- 早期発見、早期散布がいちばん。アブラムシなど大量に発生してからの散布には限度があり、発生した野菜を畑の外で始末するしかないです。
- 野菜や害虫に薬がしっかりと付着していない。葉の裏や隠れている害虫への散布ができていないと効果は発揮できない。浸透性、浸透移行性薬剤などを散布すれば効き方も改善されます。
- とうぜんながら、雨天時や風の強いときの散布はやめるべきです。
3.薬剤抵抗性は、IRACコードの活用でローテーション散布が最善の方法
農薬散布の基本は、害虫に効果のある農薬を、周辺への飛散防止をはかり、身体を防護して、適切に散布することです。ポイントは効果のある薬剤の選び方にあります。
そこで推奨されているのが、IRACコード(アイラックコード)を活用したローテーション散布です。IRACとはInsecticide Resistance Action Committee(殺虫剤抵抗性対策委員会)の略称で、国際的な業界標準で防除指針に活用されています。
ローテーション散布の原則は「害虫の薬剤抵抗性を発達させないために、有効成分の同じ種類の薬剤を連続して使用しないこと」です。害虫への効き方を分類したグループ番号(コード)で薬剤を管理します。
異なる番号の薬剤を散布すれば、害虫が抵抗力を獲得するのを遅らせることができる。すなわち同じ種類、有効成分が同じ薬剤を連続して使用しないというのが原則です。
4.ローテーション散布は、コスト増、管理増などが多くなる
ローテーション散布は、効き方の違う薬剤をかわるがわる順番を決めて、計画的に散布すること。効き方の違う薬剤をそろえることがポイント。その意味では、多くの課題が残るのも現実です。
- 薬剤の管理、在庫管理、日程管理、費用管理、すべてにおいて面倒な管理が必要。管理には時間と労力がかかり、管理しないと必要な時に必要な薬剤が散布できなくなる。
- 異なる成分の薬剤が必要、使用本数が多くなり費用負担が増大する。合理的な薬剤の選択も難しい。
- 専門的な知識が必要。害虫の発生状況を把握し、それに合う薬剤を選択し、交互に適切な間隔で散布する。一連の作業にはそれなりの知識が必要で、個人では限界がある。
薬剤価格が高い、薬剤の量も多いので相当の無駄がでる。有効期間の管理など現実はたいへん。計画から実施、散布結果をチェックして次の計画をたてる。課題は多くありどこまでやるのかやれるのか、面倒なことが多いです。
上手な管理で今年はうまくいっても害虫の発生を完全に防げる保障はなく、長期間繰り返せばいつかまた害虫が発生するリスクが伴うとすればキリがないとさえ言えます。
家庭菜園は、そこそこからまあまあ程度がいちばん。育てる喜びと収穫する楽しさが原点にあり、ビジネスのような管理がメインではストレスがたまります。原則建前論だけでは疲れます。
そういう意味では、害虫を一挙に退治できなくても、そこそこまあまあであれば精神的にも肉体的にも良しと考えたほうが気が楽ですみます。
5.IRACコード、異なる番号の農薬を散布することが最大のポイント
IRACコード表日本版は、Webサイトの「IRACコード」で検索すればコード表が見れます。最新版かどうかを確認して下さい。エクセル表の最終行に日付があります。
他には、「クロップライフジャパン(CropLife Japan)」のWebサイトを参考にしてください。日本の農薬メーカーの団体です。
下記は、コード表の頭の一部を抜粋しました。
《 コード表の概要 》

➊主要作用機構グループと一次作用部位 ➋サブグループあるいは代表的有効成分
➊➋については虫の体のどこをどう狙うのか、神経や筋肉を麻痺、皮膚呼吸をできなくするなど番号で分類している。
➌は有効成分、❹の農薬名は販売されている商品名です。
番号が違えば虫に対する攻め方が違ってくる。効く仕組みは有効成分によって違います。
《 使用上の留意点について 》
IRACコードは、殺虫剤が害虫のどこに、どのように効くのかを数字やアルファベットで分類した世界共通のルール、効き方によるグループ分けのこと。
(1) 同じ有効成分の薬剤を連続して使用しないこと。
➊主要作用機構グループ番号が同じであれば有効成分は同じ系統になる。現状は、38グループ (1番~37番+UN)あり、異なる番号の薬剤を選ぶことが原理原則。
コード表 ➋サブグループ〔4C〕〔4D〕など、数字が同じでアルファベットが違う場合は、効き方が比較的近いことを表しており、連続した使用は避けたほうがよい。
(2) 農薬名(商品名)が違っても、有効成分が同じ薬剤があるので注意すること

上記はまったく同じ内容の有効成分である。使用するならば、1つだけにすること。
アルバリンのメーカーは三井化学クロップ&ライフソリューション㈱、主たる販売はアグロカネショー㈱、ホームセンターや通販ルートなどがの主。スタークルのメーカーは同じであるが、主たる販売会社は北興化学工業、JA(農協)系統などで、アルバリンとは流通経路が違う。
その他にも同様な農薬がそれなりに多いです。これは、製造会社と販売会社が違う場合、あるいは特許の切れた成分を使用して、別の会社が安く作る「ジェネリック(後発品)」があります。中身は全く同じですが新しい商品名で販売されます。
薬剤のいちばんの命は有効成分にあります。有効成分は薬剤の不可欠な要素。有効成分で害虫に対する効き方も変わり、農薬の本当の正体は有効成分にありますので厳重注意です。
これらを見分けるときは、農薬ラベルに記載されている、有効成分が何かを確認してから使用するようにしてください。

(3)販売商品、IRACコードの表示ラベルは努力義務
農薬は、販売容器に表示ラベル(内容)の法的義務があります。ただし、IRACコードの表示に法的義務はなく任意です。IRAC番号が表示されていない農薬もそれなりにあります。
現状では、「殺虫剤分類 3A(番号とアルァベット)」の表記例が多いです。


ハクサップ水和剤は、2つの異なる有効成分を持つ混合剤です。フェンバレレート(3A:合成ピレスロイド系)マラソン(1B:有機リン系)
6.農薬名(商品名)を調べる方法
だいじなことは、自分の畑の農薬リストを作っておくことです。簡単に言えば記録しておくこと。この積み重ねがものをいい、記録の経験値は最も重要な財産になります。
(1)地元での農薬情報がいちばん農薬の効きやすさには地域性があります。お隣の畑の情報がいちばんですが企業秘密の場合は、令和7年度農薬防除基準 きゅうり(野菜名)などでWebサイトを検索してください。
何らかの情報がヒットします。新年度は、前年度の冬から春先(2月〜4月頃)にかけて最新版が公開されるようです。
各地域のJAなどでは、例 : 令和7年度 夏秋きゅうり病害虫防除基準JA〇〇〇 きゅうり振興部会 このような形の情報公開もありますのでWebサイトをチェック願います。
都道府県単位での病害虫防除指針なども、丁寧な説明があります。
〇 東京都病害虫防除指針(付 除草剤使用指針)令和7年版(2025年版) オンライン版
〇 大阪府 令和7年版 農作物病害虫防除指針(令和7年6月19日更新)
(2)Web検索何の農薬を使用したらよいか。インターネットで検索すればあらゆる情報が得られます。ただし、AIについては必ずしも正解でない場合もあります。よく調べてから購入すべきです。
私のおすすめサイトは、 きゅうり アブラムシ 農家web で検索すると、きゅうりに発生するアブラムシを防除する農薬について簡単に調べられます。 その他には、 農薬インデックス 農薬登録システム これらも使用できますが一長一短です。
7.私がIRACコードを知ったのは、高温で病害虫被害が多くなったから
私がIRACコードの存在を知ったのは2年程前です。殺菌剤がなかなか効かないのでチェックしたところRACコードの存在を知りました。殺菌剤はFRACコード、ローテーション散布の効果はあるような気はしています。
殺虫剤のローテーション散布はこれからです。今までは知らないで散布していた結果、在庫薬剤の成分は 1.3.4番に偏っています。番号の違う農薬購入はたいへんですが、高すぎず多くの野菜に効果のある農薬を購入すべきです。
できるならば、時間をかけて薬剤名と野菜と害虫のリスト作成ができれば、散布はだいぶ楽になります。


8.まとめ
- 農薬を効かせるためには、「風のない晴れた朝に、成分の違う薬剤を、根元や葉の裏まで、しっかりと散布する」、この意味するところを自分畑に置き換えて、計画をたてるようにしてください。
- 農薬が効かないのは薬剤抵抗性です。虫が抵抗力をつけて、農薬を散布しても効かなくなる。対策は、同じ種類の農薬、有効成分が同じ農薬を連続して散布しないことです。
- そのためには、IRACコードを活用したローテーション散布が最善の方法。作用機構(薬の効き方)が異なる農薬を交互に順番を切り替えて散布する。特定の農薬が効かない抵抗性害虫の発生を抑えるための散布方法です。
- IRAC活用はコストや労力が増大しますが、やれる範囲で計画的に進めること。結果を記録して次の農薬散布に活かすことが最大のポイントです。
9.IRACコード具体的な使い方を解説します
きゅうりの露地栽培(ハウスを使用しない)で、IRACコードの使い方を解説します。
3大害虫といわれる、ウリハムシ、アブラムシ類、ハダニ類を主にした農薬名を取り上げています。2~3本の違う農薬を準備します。
(1)ウリハムシのローテーション散布例・1回目 4A モスピラン顆粒水溶剤(2,000円) ➡ 2回目 13 コテツフロアブル(2,500円) ➡ 3回目 28 ベネビアCD (3~4週間程度で絶滅できなければ、また1回目の農薬から散布する。もしも、1回目で絶滅したならば、次回は2番目の農薬から散布していく)
(2)アブラムシのローテーション散布例・1回目 3A トレボン乳剤 ➡ 2回目 21A ハチハチ乳剤 ➡ 3回目 4A ダントツ水溶剤 (3~4週間程度で絶滅できなければ、また1回目の農薬から散布する。もしも、1回目で絶滅したならば、次回は2番目の農薬から散布していく)
表-02 きゅうりで使用する薬剤の一覧 参照

ご訪問をいただきありがとうございました。








