大雨で家庭菜園が冠水、土壌への酸素供給と殺菌剤撒布で乗りきりました
(だいぶ水が引いた状態)

記録的な大雨、でも自分のところは大丈夫。私もそう思っていました。

まさか2度も水害にあうなんて、とても考えられないことでした。

この経験から

  • 畑の野菜が水没した場合、野菜はどうなるのか
  • 畑の水が引いた後、どのように対処すべきか
  • 野菜の耐水性、水没した野菜は食べられるのか

これらについて解説をしています
  さらに、実際の体験から私の対処法についても紹介しています。

積雪の多い東北南部で20年以上、100坪程度の家庭菜園をやってきたおじさんが、2019年10月、2022年8月、2度の水害を経験してしまいました。あってはならないことですが、気候変動が激しいと云われる昨今、人ごとだけでは無いようです。

この記事を読んでいただければ、畑の野菜が浸水しそうになったとき、水没したときなど、ステップを追って対処していただければ、被害を最小限にすることは可能です、ご一読いただければと思います。

1.記録的大雨は2度、畑は広大な湖のようで言葉がでません

(畑の冠水とは、畑の作物が水没してしまうこと)

  • 令和1年(2019年)10月13日、「50年に一度の大雨」観測史上最大の降雨量を記録した台風19号。私の地域も過去最高の降雨量、町としては100件程度の床上床下浸水。田畑の冠水で大きな被害が出ました。

  • 令和4年(2022年)08月3日、東北、北陸地方を中心に記録的な大雨、道路、住宅、田畑の冠水など甚大な被害となりました。畑の周囲の水没面積は約45,000坪、東京ドーム3個分程度。
 

2度とも、堤防沿いに囲まれた畑の周囲は一晩にして広大な湖のよう。我家の106坪の家庭菜園、水深は1.5m程度、水が引くまでに24時間。1度目は初めての経験、まさか3年後に2度目の冠水、大きな水害などない所、温暖化、異常気象の波、そんな印象を強く感じました。

令和1年は秋野菜、収獲を前にしてほとんどの野菜を廃棄しました。令和4年は夏、野菜への被害はありましたが、秋野菜の準備はなんとかできました。

(湖のような広さ)
畑は全て冠水
(冠水した畑)

2.野菜が冠水すると酸素不足になり、やがて枯れてしまいます

冠水は水害、畑の野菜が水没します。水のにごり具合、水温、水量、水没した時間などによって野菜への影響はさまざまですが、主たる原因は酸素欠乏です。酸欠がおこり、呼吸ができなくなり窒息死、葉や根が傷んで細菌性の病害、さらには土壌の環境改善が必要となる場合もあります。

植物は「二酸化炭素を吸い酸素をだしている」という印象ですが、いっぽうで「酸素を吸って二酸化炭素をだしている」、人間と同じように呼吸をしています。酸素不足で呼吸ができなくなる、ひどくなると植物は枯れてしまいます。

たとえば、生育の最大ポイントである根、水をかぶったままで溺れた状態がつづくと、酸素欠乏で呼吸ができなくなり、土壌から養分や水分を吸収するはたらきが低下し、根腐れをおこし枯れます。

(1m程度水没している)

3.水が引いた後の対処法、土壌への酸素供給と殺菌剤撒布

冠水後の対処法について調べましたが、栽培面積、冠水規模などによりさまざまです。ここでは、家庭菜園程度でやれるような内容についてまとめてみましたので、参照願います。

参考にした資料は、広島県西部農業技術指導所「露地・施設野菜における湛水・冠水害について、平成30年7月17日」、月刊現代農業2018年8月号「台風・豪雨に立ち向かう」コーナー。

  • ステップ01、水が引くのをあわてないで待つこと

    水量はケースバイケース。畑に行って2次災害にあわないよう落ち着いて待つしかないです。水が引いたならば、畝と畝の間にたまった水の排水、溝を掘って畑の外に流してください。
  • ステップ02、かたずけ、マルチをはがす

    流れたついた不要物をかたづける。ゴミ類、秋は田んぼの稲わらなどを畑の外にだす。自分の畑から流れ出たものがあれば回収する。畝にマルチをしている場合は、畝肩あたりまでマルチをめくって早く乾燥させる
  • ステップ03、野菜の葉や茎などの泥を洗い流す

    回復見込みのない野菜は引き抜いてしまう。ついでに、実のある野菜はできるだけ実をとりのぞく。付着した泥など、できるだけ乾燥しないうちに、頭上から水で洗い流す。

    ジョーロ、ホース、噴霧器、洗浄機、ポンプなどで、1~2回ていねいに洗い流す。それでも乾くと緑色が薄くなるが、泥がとれてしまえばよい。エンジン付きの噴霧がベスト。
  • ステップ04、土壌に酸素を供給する

    土中に酸素供給剤を潅注する。できるだけ株元に棒などで穴をあけジョーロなどで注ぐとよい。酸素供給剤の種類は多いが、私はMOXを潅注した。2~3日ごとに1回程度、合計3回程度でよいと思う。
 
(潅注 穴をあけ、ジョーロ先で水を入れる)
(動噴で水洗いや殺菌剤撒布)

  • ステップ05、殺菌剤を散布する、病害予防

    殺菌剤にて病気による被害の予防、ダコニール1000など。殺菌剤を使用したくない場合は、水で300倍で薄めた酢でもよいそうです。
  • ステップ06、葉面散布や追肥

    殺菌剤撒布後2日程度空けてから、酸素供給剤や液肥などで葉面散布が効果的。肥料が流れたようであれば速効性肥料8-8-8などを追肥する。液肥はハイポネックスでもよい。

一通り、これらをやってみて様子をみてください。

殺菌剤撒布は少し薄めにして、4~5日間隔で3~4回やってみて様子見。殺菌剤には予防用としてダコニール1000、オーソサイド水和剤、治療用としてベンレート水和剤、トップジンなど、いずれも散布可能です。

生育不良になりそうな野菜は、早めにとりのぞき、まき直したほうが良い。実のついた野菜はいったんすべてとってしまい、木への負担を軽くしたほうが良い。

(酸素供給剤 MOX 10㎏)
(ピーマン 3~4日して表面がやられそう)


野菜の耐水性の目安日数について

出典は、広島県西部農業技術指導所「露地・施設野菜における湛水・冠水害について、平成30年7月17日」の資料からです。

冠水や浸水が続いた場合、被害が発生するまでの日数の目安です

  • 水に弱く1日程度で被害が出てくる  カボチャ、キュウリ、トマト、ピーマン、タマネギ、 ハクサイ、ゴボウ(6~7葉)、ダイコン、インゲン
  • 2日程度で被害、ホウレンソウ、ネギ、 ゴボウ(2~3葉)、ニンジン、サツマイモ
  • 3日程度で被害、ナス、スイカ、ラッキョウ、ニラ、レンコン
  • 5日以上で被害、シソ、サトイモ、ヤマイモ

食べられるかどうかの判断について

家庭菜園で正解は無いようです。(販売される方は別でしょうが) 個々人の判断しだいです。見た目ではダイコン、サトイモなどの根菜類はまあまです。ハクサイは葉の中に泥が入りますので表面を洗っても食べられないです。葉物は食べないほうが良いです。

(カボチャ、もう少し洗わないと)
(きれいに落ちないエダマメの葉)

4.具体例、私は酸素供給剤と殺菌剤撒布で対処しました

私の対処について、時系列に紹介します。令和1年は収穫前でしたので、サトイモを除いてすべて廃棄しました。お友達は、ダイコン、ネギは食べたとのこと、問題は無かったそうです。

令和4年8月は、秋野菜に向けた畝づくりのタイミング、エダマメ、ピーマン、シシトウ、トマト、キュウリなどは駄目でした。ネギ、ナス、サトイモなどはなんとかなりました。畑が乾いたのは8月末、ようやく秋野菜の畝作りができました。

ここでは、令和4年8月5日以降に対処した内容について紹介いたします。

● 8月3日夕方から大雨、4日朝確認にて冠水、1.5~2m程度。水が引いたのは5日朝。

  1. 5日、かたずけと回収、 他から流れ着いたものを取り除く、大きな木のパレットに化成肥料の袋が載ったまま流れてきました。自分の畑から流れ出したものはイス代わりのビールケース、水タンク、その他も回収です。秋は収穫後の稲わら、野菜に付着してめんどうです。
  2. 5日、収獲のできない野菜は引き抜く、実のあるものは樹勢回復のためにもぎとる。
  3. 5日、水洗い、エンジン付きの背負い噴霧器で。乾くと泥が落ちにくくなるので早めの作業が良い。1回できれいにならない場合はもう一度。葉が乾くと土色が残るがしかたがない。
  4. 5日、殺菌剤撒布、病気予防にダコニール1000散布。
  5. 6日、酸素供給剤潅注、主要な作物の根腐れを防止すべく、株元に棒のようなもので軽く穴をあけ、ジョーロの先から注ぐ。たいへんなので、その他の野菜は根の周りに酸素供給剤を散布する。

    できれば、すべての野菜の根っこに潅注したほうがよい。酸素供給剤はMOX 10㎏で4,300円。水10ℓで100cc、100倍。5日に小雨だったので、MOX100倍で葉面散布。
  6. 10日、酸素供給剤2回目の潅注、8~9日頃から病気の葉がめだってきた。キュウリ、ナスの葉は枯れているものが多くなり、とりのぞく。
  7. 11日、葉面散布と追肥、殺菌剤ベンレート、液肥ハイポネックス2000倍を混用して野菜の木と葉面散布。追肥は速効性の化成肥料8-8-8、根から離して両側にパラパラ。
   

⦿8月13日、葉面散布 殺菌剤ダコニールと液肥ハイポネックス2000倍

⦿8月16日、葉面散布 殺菌剤ジマンダイセンと液肥ハイポネックス2000倍

(8月5日以降も小雨がときどきあり、間隔は短いが希釈倍率を薄めて液肥散布をした)

以降様子見、8月20日頃から少しすずつ良くなってきたのが分りました。

(1m程度浸水している)
(シシトウ、ピーマン)

野菜の状態について

冠水した野菜でダメになったのは、ピーマン、パプリカ、シシトウ、トマト、などが土から片手で抜きとれました。エダマメもダメ、キュウリは1/3本だけがダメ。8月24日頃、ネギ、ナス、サトイモは復活しました。ナスのマルチは面倒なのではがしませんでした。

8月末にようやく土壌が乾いてきましたので、なんとか秋野菜の畝づくりを始めました。

以上が令和4年の概要です。令和1年は秋の収穫前で、なにも考えずにほとんど廃棄しました。

私の対処した概要です。対処法に正解は無いような気もします。野菜の種類や量がさほど多くないのでそれなりにできましたが、規模によってはたいへんだと思います。

(キュウリ 真ん中は新芽からやられました)
(トウモロコシ 収穫後で助かりました)

5.まとめ

野菜の冠水時間がどの程度なのか、直接河川からの流入かなど、いろんな要素がありますので対処法は難しいというのが本当のところです。

云えることは、水に浸かれば酸素欠乏になり窒息死、根腐れなどがおこりやがては枯れてしまう。病気が発生しやすくなります。

基本的な対処法は

  • 排水後、葉が乾かないうちに泥などを落としてしまうこと
  • 土中はほぼ酸素欠乏なので、酸素供給剤を土壌潅注すること。MOXは2~3日間隔で3回ぐらいまでよいと思います。(7~10日に1回と記載されていますが) 
  • 葉や木には殺菌剤の散布。少し薄くして。4~5日間隔で 
  • 液肥で葉面散布。私はハイポネックスを薄くし散布回数を多くしました 
  • 速効性の化成肥料の追肥 
 

酸素供給剤を株元に潅注、殺菌剤撒布、液肥の葉面散布、追肥など、様子見ながら繰り返すしかないです。私はこれで野菜へのダメージを少なくすることができました。

水害にあってはたいへんなことですが、もしもの場合や、少しだけ冠水した場合など参考にしていただければと思います。

ご訪問いただきたいへんありがとうございました。

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